『イン ザ・ミソスープ』 村上龍

村上龍さんの『イン ザ・ミソスープ』読み終わりました。
※ここからネタバレ注意

前回の中村さんに引き続きかなり重い内容でした笑
いちおう断っておきますが、僕は決してノワール小説好きというわけではありません。中村さんの前は、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』を読みながら、30半ばの女性になって、三束さんという謎めいた年上男性との恋にやきもきやきもきしておりました笑

さて村上龍さんですが、本当に凄い小説家です。
僕たちの世代だと、村上春樹さんの方がメジャーですが、龍さんの本を何でもいいから1冊手に取って1回真剣に読めば、彼の小説の強さ、そして鋭さに驚かされると思います。本当に無駄のない文章で、キレッキレです。

今回の『イン ザ・ミソスープ』という小説は、変な外国人と、彼に東京の夜の街を案内する青年の話なんですが、その外国人は実はあくびしながら人を殺せる人間なわけです。
コミュケーションって、特に日本の場合、相手の立場をいくらか想像できるから成り立つわけで、でも今回主人公の前に現れたのは本当に1ミリも共感とかできない相手なわけで、そんな二人がどうやってコミュニケートするかっていうところが面白いところなんですが…一読しただけでは、外国人のフランクが行う殺人シーンのイメージだけが脳裏にベッタリと張り付いてしまいます。

僕はこの小説がブックオフとかで100円で売られている事実が本当に恐ろしい。いっそのこと新聞紙でくるんで、ガムテープでぐるぐる巻きにして、金庫で保管して欲しい。そのくらい龍さん描写と言葉は震えるほどに恐い。
その文体でフィクションをどこまでもリアルに近づけてくる。
僕らの周りにあるもろくてゆらゆらした現実なんて簡単にぶっ壊されて、最後に耳元で「こんなふうになったら、お前はどうする?」ってささやかれる。

僕は龍さんの小説を読むたびに、物語や言葉の持つ力にぶるぶると震えるのでした。