『舞台』 西加奈子

西加奈子さんの作品とは最近出会いました。

以前映画で『きいろいぞう』を観てしまって、何だか小説には手を出せずにいました。

しかし今回『サラバ』で直木賞を受賞されたので、読んでみようかなぁと思ったんですが、どうせ読むならデビュー作からだー!ということで、

『あおい』、『さくら』を読んで『舞台』で三作目。

『さくら』まで順番に来たのに『舞台』に飛んでしまったのは、僕が単純にニューヨーク好きだからです。

※以下ネタバレ注意

 

 

『舞台』は29歳の葉太が、初めての海外旅行でニューヨークに訪れ、初日に盗難にあって自己を再発見するというようなお話です。

 

実は僕も学生時代にニューヨークに留学した経験があり(僕の場合なんの武勇伝もありません。強いて言えば松井のホームランを生で観れたくらいです)、僕にとってもニューヨークは特別な場所です。

まぁ僕の話は置いておきまして、とかく芸術を志す者にとってニューヨークは避けては通れないというか、避けずに通りたいというかそんな場所なのです。

小説家であればニューヨークを書きたい。

画家であればニューヨークを描きたい。

写真家であればニューヨークを撮りたい。

一度でもニューヨークに行ったことがある人ならわかると思いますが、ニューヨークは本当に魔法の街だと思います。

その全てが画になり、物語になります。生活している人と観光客がみんなでニューヨークという舞台を演じているような感じです。

僕は主人公の葉太よりもマンハッタンを歩き回った自信があるので、あっちも、そっちも、もっと西さんにニューヨークを描写して欲しいという目線で最後まで読んでいました。

西さんの『舞台』を読んでセントラルパークに憧れて、実際訪れる人もいるんだろうな。

ちなみに僕はポールオースターの『ムーンパレス』と映画の『ホームアローン2』でセントラルパークに憧れ、実際に訪れました。セントラルパークはマジで最高です。

 

葉太は生きているだけで恥ずかしいという太宰治みたいな人間で、実際太宰作品に影響を受けたと作中で言及します。

そして何もかも失って、最後に自分の抱える「苦しみ」だけが己のものであると悟ります。

 

よく中高生が人には言えないような悩みを抱えて、小説に助けを求めたら、主人公が同じ悩みを抱えていて、僕だけじゃないんだって、救われたという話を聞きますが、僕の場合は、自分の変さとかコンプレックスだけが、自分と他人をわけ隔てる唯一のアイデンティティみたいなものだと考えていたので、小説で同じもの抱えた登場人物に出会うと、俺って普通だったんだとか、みんなもそれ考えていたんだと逆に落ち込んだ気がします。

 

自分はみんなと同じ。自分はみんなと違う。自分のことを考え出すと答えは見つかりません。

でもニューヨークという舞台は自分のことを考えるのに最適な場所だと僕は思います。