『デッドエンドの思い出』 よしもとばなな

よしもとばななさんのおかけで僕は小説が好きになりました。

 

みんな何のために小説を読むんでしょうか?

僕の答えは簡単です。

彼女の『キッチン』という作品を読んだときに味わった、

奇跡のような感覚に再び出会いたいから。

 

どのシーンでそれは起こったか、正確に覚えています。

主人公の女の子が、屋根の上、かつ丼と共に夜空を見上げているシーン。

どんな感覚を味わったか、今の僕では正確に伝えることは出来ません。

それが上手く出来たら僕はたぶん小説家になれると思います笑

 

でも挑戦するとすれば…

その感覚に一番近い表現というか、描写は、

映画『スタンドバイミー』で、死体探しの道中、主人公たちが森の中で野宿をした翌朝、主人公がひとり早起きして、偶然、野生の鹿を目撃し、そのことを自分の心の中だけに留めておくシーンがあるんですが、まさにそんな感じです。

いろんな不安とか思惑とか言葉とかそんなものが、圧倒的にきらきらした光みたいなものにブワッと払いのけられて、めちゃくちゃ静かになって、お腹の底あたりからじわーってあたたかくなってくる感じです。

伝わりましたでしょうか?

 

友達と遊んでも、スポーツや仕事に精を出しても、この感覚とは出会えません。

出会えるのは小説を読んでいるときと、恋をしているときだけだと思います。

『キッチン』以降、僕はまたその感覚を味わいたくて、たくさん小説を手に取りました。

そして、いろんな作家さんの小説で度々その感覚と出会いました。

でも読めば読むほど、出会う瞬間が減ってきたようにも感じます。

しかし、気を抜き、油断していると、いきなりそれはやってくるのです。

最近では、柴崎友香さんの『春の庭』を読んだときにバッスーンやられました笑

だから小説を読むのを止められないのです。

ばななさん、教えてくれて本当にありがとう。

 

さて『デッドエンドの思い出』ですが、切ない恋愛模様を描いた短編集です。

ばななさんの恋愛小説は本当にきゅんきゅんきゅーんしてしまいます。

SNSだけで男女関係やっているやからたちにぜひ読ませてやりたいですねほんとに。(SNSでなかなかいい恋愛しちゃってる人いたらすんません。30過ぎると若い人をちょっとだけバカにして、自分がいくらかは成長しているって思いこませないとやってられないのです笑)

 

僕は5つの短編の中でも『幽霊の家』が気に入りました。

※ネタバレあり

 

 

気になる男性と一夜を過ごした布団の中で、主人公は幽霊をみるんだけど、その幽霊は全然怖くなくて、幽霊と男性のぬくもりに包まれながら主人公はどんどん恋に落ちていきます。

以下はそのシーンの本文からの引用

本気で好きなってしまいそうだった。ただでさえ、まだ体中が彼の性質を感じとっている最中だった。あんなに弱くてばかで優しくても、ちゃんと男の子で、男の力で女を抱くことができるんだと

 

こんな文章書かれた日にはたまりませんよね。

幽霊さんたちがふたりの恋に何をもたらすのか…ぜひ読んでみてくださいね。