恋愛について
先日、とある新聞の人生相談のコーナーに、
「男にふられて立ち直れない。本気の恋だった。どうしたら次に進めるだろうか」というような相談が載っていた。
相談者も、おそらくこれまでに誰かの同じ相談に乗った経験があるんじゃなかろうかと、少しだけ笑いを堪えながら読んだ。
相談に対するどこかの大学教授さんの回答は、
「無理に忘れる必要はありません。恋愛中は自分のことを最もよく知ることができます。必ず次にすすめる日がくるので、それまでは焦らず自分のことを見つめなおしてください」といった模範的なものだった。
ご多分に漏れず、わたしも同じような悩みを持った時期がある。
新聞に投稿することは思いもよらなかったけど。
失恋して死ぬほど寂しかったわたしは、そのときはじめて嘘をついて、身近にいた女性と関係を持った。
何に対して嘘をついたのか。よくわからない。
自分に? 相手に? それとも社会とか常識とかそういうものに?
相手の女性は、別れ際に決まって「ありがとう」という女性だった。
わたしはそれが何と言うか、たまらなくて、どんどん抜け出せなくなっていた。
自分の中にこんなにもだらしない自分がいたなんて…。
いや、これがほんとうの自分なのかもしれない。
というか、なんだかこれまでの恋愛より、自由で動物的な気もする。
これがほんとうの恋愛なのかも。
恋愛という流れのなかで、わたしという自分はゆらゆら、ふらふら、たゆたって、すきという言葉とか、セックスっていう行為とか、信頼とか、男と女とか、これまでカチカチに形が見えていたつもりのものが、彼女の「ありがとう」を聞くたびに、トロトロと溶けていった。
ふと気がつくと周りの大人にえらい怒鳴られて、相手の女性には、ぐーで殴られた。
女性にぐーで殴られると、やり返せないから、石とかが当たったのに似ていた。
大学教授さんの回答は、半分は正解で、半分は間違っていると思う。
恋愛とは自分をよく知る行為ではなく、人間をよく知る行為なんだと思う。