『ミナトホテルの裏庭には』 寺地はるな
寺地さんとの出会いは、以前私が応募した文学賞の……って、
私の寺地さんに対する、サウナ室のバスマット交換くらい一方的な片思いの物語は、彼女の前作『ビオレタ』のレビューのときに書いたので、興味のある方はそちらをご覧ください↓
『ミナトホテルの裏庭には』は寺地さんの二作目。二作目が表現者にとってどれほど大切であるかということも、彼女のデビュー作『ビオレタ』のレビューのときに書いたので、興味のある方はそちらをご覧ください↓
※ここからネタバレあります
『ミナトホテルの裏庭には』、タイトルからもう読みたくなりますよね。
ルパン三世のオープニングみたいに、ミ、ナ、ト、ホ、テ、ル、ダダダダダドンガラガッシャーンみたいに見せられた日にはたまらないですよね。
それで裏庭には、いったい全体何があるって言いますの? 宝の地図? 金塊? それとも死体?……とか勝手にザワザワしながら本を手に取ったら、あらまカワイイ装丁に心が『ポワポワ』してしまいました。
この『ポワポワ』というのは実は寺地さんが作品の序盤で、女性を形容する際に使った言葉なんですが、これまで女性のことを『ポワポワ』と表現した小説家はいただろうか、いやいない(いたらすんません)、このポワポワを目にした途端、僕はワクワクして、そしてすぐに身構えました。
寺地さん、ちょけてる。こりゃもっとちょけてくるな。
その後は寺地さんがいつちょけてくるかが気になって、さらには、ちょける寺地さんとそれをいさめる編集者さんのやり取りが勝手に頭の中で始まってしまい、話の筋が全然入って来ませんでした。
というのは嘘で、私もちょけずに感想を書きます。(主人公、芯くんの心理描写で所々笑っちゃいました。次作ではもっとちょけて欲しいです)
物語は、芯くんの視点の一部と陽子さん(ミナトホテルのオーナー)の視点の二部(またはエピローグ?)に分かれていますが、僕は陽子さんの物語にぐっときました。
甥っ子の篤彦くんへの想いが、やさしくて、つらくて、かなしくて、文章の一行一行につよさを感じました。陽子さんが篤彦くんの前で涙を流せてよかったなぁとしみじみ思いました。
子を持つ母親の気持ちは、男の私には絶対に味わえなくて、すごく羨ましくて、いーってなるんですが、こうして小説でちょっぴり味わうことができて幸せだなぁと。
一番お気に入りのキャラは芯くんのおじいさんです。
陽子さんは彼のことを『やさしいけれども、厳しい人』と表現しています。
『冷淡』な芯くんに、ほんまの優しさとは何たるかを叩き込むため、祖父は芯くんをミナトホテルの裏庭に誘ったんじゃないのかなぁ。
そうなるとミナトホテルの裏庭には、ベンチプレスとかエアロバイクがあって、裏庭は秘密のフィットネスクラブだったとも解釈できますね。
できません。はい。すいません。
寺地さん素敵な二作目ありがとうございました! 次作も楽しみしております!