スキじゃない
あなたにちゃんとスキって言えなかったのは
それこそが僕のいいところで あとはぜんぶ悪いところで
SNSを見るぶんには今のあなたはたぶん幸せだろうから
あなたがまちがいなく読まないこのブログで
その安心感から あなたへの気持ちをいまさら書くのです
あなたとの仕事も あなたとのデートも あなたとのセックスも
どれをとっても僕にとってはドキドキの連続で
だってあなたのことを全然スキじゃなかったから
そんな僕になったのは初めてだったから そりゃもうびっくりしたのです
あなたは僕に ありがとうとか スキとか キライとか 死ねとか いろいろぶちまけてくれたけど
僕はあなたになんにも言えなかった それはつまり あなたは僕にはじめての気持ちをくれたのです
僕はあなたを笑わせるのも 悲しませるのも 泣かすのも ぜんぶ楽しかった
スキじゃなかったからこそ あなたの顔 髪 体 言葉 匂い 仕草 料理 ぜんぶをちゃんと味わうことができた
あなたと一緒に行った美術館 一緒に聞いた曲 一緒に読んだ本 だいたい覚えているよ
僕もそれなりに幸せになった今 こうやってあなたのことを思い出し キュンとしているんだけれども
あなたにはそんな時間はあるのかな
例えば赤ちゃんが寝た後に やっと本を読める時間ができて そういえばあいつも本がスキだったなとか そんなふうに僕のことを思い出す時間なんてあるのかな
別になくても全然いいんだけど 僕にはあるから こうやってブログに書いているのです
あなただけにもらったこの気持ちをどうにか言葉にしようと 遠く遠く あなたから離れたこの場所で 僕は生きていて あなたも生きていることが 本当に嬉しい