人生30過ぎてからでしょう。

好きな本、映画、日々考えていること、気の向くままに書きます。

『魔法にかけられて』

 

先日池袋の乙女ロードにある『魔法にかけられて』というお店に潜入してきました。

そもそも乙女ロードとは何ぞや。

乙女ロードは、女性向けのコミックスや関連商品を集めたお店、秋葉原でいうところのメイド喫茶の女子版「執事喫茶」等が軒を連ねる、まさにオタク女子たちの聖地なのです。

しかし東京は大抵の趣向に対する聖地が網羅されていますね。田舎で私のことなんて誰もわかってくれないって枕を濡らしてる女子。一回東京来い。そして己のしょうもなさに打ちひしがれればいいわ。そしてたくさん友達作ればいいわ。

 

さて、そんな乙女ロードの寂れたビルの地下にあるのが『魔法にかけられて』です。

お店のコンセプトは、呪いで女の子にされちゃった男の子がお出迎えするカフェバーとなっております。実際は呪われただけじゃ女の子にはなれないので、みんなお金稼いで、お金をかけて、女の子になってます。はい。

 

入り口につながる階段を降りていくと、店内から何やら野球の応援歌のようなものが聞こえてきて、野球にとことん興味のない僕は、心が折れそうになりましたが、意を決して扉を開くと、呪いで女の子にされた男に「入場は4500円です」と言われました。

どうやら僕の潜入した日は、キャストの誕生日パーティーの日で、店内は椅子が壁際に並べられ、真ん中のテーブルには大皿にお菓子や枝豆やらが盛られていて完全な立食パーティー状態でした。キャストは5名ほどで、他の客はほとんどが女子で、彼女たちは本日の主役キャストのファン的な感じで、まさにガンバのユニフォームを着て浦和側に座るようなものでした。

ハイボールを片手にリュックも降ろせない僕を見かねたキャストが声を掛けてきて「お兄さん若い頃のアレに似てるね。ほらアレ、よく言われるでしょ? アレ。今日は初めて? まさかテレビ見て来てくれた感じ? 嬉しいね。お兄さんも女装とかするの? ここはね、心は男のままで、コスプレ的に女装してるキャストがほとんどだから、新宿とかのお店とはちょっと違うのよね。お客さんも女の子が多くて、好きなキャスト目当てに通って来てくれる感じなの。今日はこんな感じだけど、いつもはもっとゆったりしてるから。とにかく楽しんでいってね」と話しながらパイの実を二つほどつまんで去っていきました。

しばらくして主役のキャストが拡声器を片手に店の真ん中に立つと「○○さんがシャンパン開けてくれました」と叫び、プラスチックのグラスで作った三段のタワーに少しずつシャンパンをついで、何だか野球の応援歌みたいなものを歌い出し、他のキャストも客の女の子たちも、拳を突き上げて何だか野球の応援歌みたいなものを歌い始めました。

僕はそのなんとも摩訶不思議な光景を眺めながら、この野球の応援歌みたいなものが呪文そのものであり、目の前で繰り広げられている騒ぎが一種の通過儀礼であることを悟りました。

僕の口が勝手にその歌を口ずさもうとしたその時、数少ない僕以外の男性客が話し掛けてきました。「君さ、どっかで会ってない? 先月のイベントかな? あれ? ちがうか。会ってないか。君も女装男子が好きなの?」「いえ。僕は自分が女装する方に興味がありまして」「そうなんだ。写真とかないの?」「ありません」「残念だなぁ。今度女装して来てよ」「そうですね。あなたは何で女装男子が好きなんですか?」「君さ、SM好きな人に何で好きって聞ける? 君も何で女装に興味あるかなんてわからないだろう。そんなの理由なんてないよ」

おじさんに圧倒的な正論を言われて、ようやく呪いが解けました。