5月のあたし

 

この春から妻が念願のファッション業界に勤め出すやいなや、帰りがえらく遅くなったので、平日は僕が家事を担当しているのだけれども、早起きしてピンクの可愛いエプロンを身につけ、おにぎりを握ったり、お弁当箱に卵焼きを詰めたり、会社のお昼休みには夕食の献立を考えたり、帰り道にスーパーに寄って買物かご片手に冷蔵庫の中を考えながらネギを手に取ったり、帰宅後料理をして出来上がった物にラップして、妻にメニューをラインで知らせ、「たぶん先に寝てるけど気を付けて帰ってきてね」とかメッセージを送っていると、本当に自分が女性になったような気がしてくる。

一応断っておくが、家事をするのは女性の仕事だとか言っているのではなく、なんというか、僕よりはるかに長時間働いて好きな仕事をしている妻に対して、頑張って欲しいなとか毎日楽しんで欲しいなとか気を付けて帰ってきて欲しいなとか、そんなことを考えながら洗濯物を干したり、トイレの便座を磨いたり、はたまた休日でも「行かなきゃ」とか言いながら姿見の前で胡坐をかきながら化粧をしている彼女を後ろから見守ったりしていると、なんだか心と体がポカポカしてきて、自分の胸に乳房とか飛び出してくるんじゃないかとか思うのだ。

このポカポカ感が、僕の中では女性らしくて、家事なんていうのただの行為にすぎなくて、この感情にぴったりな言葉が見つからないから、自分が女性らしくなってきたとか言ってしまうのだ。

結局なにが言いたいのかというと、やっと好きな自分に近づいてきている気がする5月。