『たたみかた第2号』アタシ社

 

『たたみかた』は神奈川県の夫婦出版社「アタシ社」さんが出版している文芸誌で、「30代のための新しい社会文芸誌」というサブタイトルが付いています。

創刊号の「福島特集」はそりゃもう素晴らしかったんですが、待ちに待った第2号は「男らしさ女らしさ特集」という、なんとまあ私が勝手にライフワークとしているテーマだったので、浅草で開かれた『BOOK MARKET 2018』に足を運び、フライングゲットして速攻で読みました。会場では編集長の三根かよこさんにもお会いできて、なんだかとても人間味のある素敵な方で、『たたみかた』が3割増しで好きになりました。

 

それにしてもこの雑誌、まず存在自体が頬ずりしたくなるほど素晴らしいんです。紙の質感、テキストと写真のバランス、ボリューム感、におい…あぁもうたまりません。本が好きな人が大切に作ってるってちゃんと伝わってくる雑誌です。

それはさておき「男らしさ女らしさ特集」と聞いて私はてっきりLGBTの当事者の方とか、男性的な職業の方、女性的な職業の方、夜のお仕事の方、お年寄りから幼児まで等々、性の様々な角度からの「男らしさ女らしさ」を集めた内容になっているのかと思いきや、全然違っていて、「男らしさ女らしさ」を入口または出口として、他者(社会)と個人の関わり方、相手または自己の認め方を考え直すというような内容でした。

 

編集長の三根さんは「男と女」を語るにあたって、私の中に「怒り」が芽を出した、と本の中で書いています。

私にとって「男と女」を語る上で「怒り」とはなんだろうか。私は男として生まれた自分にうまく馴染めなくて今尚もがき続けているけど、それについて別に社会に怒りを抱いたりはしない。ただ毎朝下半身が大きくなったり、髭が伸びたりすることで悲しい気持ちにはなるけれど、女性と恋愛をして、結婚もしているし、仕事も住居もある。しいて言えば、これだけ恵まれているにも関わらず今の自分に満足できない、強欲な自己への怒りだろうか。

 

「男らしさ女らしさ特集」は後半どんどん加速していき、話がセックスに及んだと思いきや、テロリストまで飛躍していきます。男女問わず人間にある心の穴、多様性を認められない人への多様性、ひとさじの自己肯定感など、たくさんの心に残るフレーズが飛び出す中で、私の掴みたい「男らしさ女らしさ」のその先みたいなものの答えは見つからないまま雑誌は幕を閉じてしまいました。まあ名残惜しいこと。

 

「男らしさ女らしさ」の話を持ち出すと、男らしくでも女らしくでもなく、私らしく…と、性別の問題を切り離してすませてしまうことがよくあります。性別の問題も難しいですが、じゃあ私ってなに?は、なおのこと難しい。

それでもスーツではなくワンピースを着たいとか、この季節なら髪の毛アップにして浴衣で街を歩いてみたいとか、子どもを授かれるなら父親ではなく母親として授かりたいという感情は、思考や言葉では押さえつけられないほどリアルにそこにあり、死に近づくにつれてその声が大きくなっているような気がします。

 

今回の特集の中で私が一番面白かったのは、ネルノダイスキさんの『きんき』というマンガでした。男と女が一つになった生き物?だけが暮らす世界のお話。今後の創作のヒントになりました。

 

『たたみかた第2号』、とっても素晴らしかったです。そして男と女を巡るお話は到底終わりそうにありません。