学童クラブで働く

 

学童クラブでアルバイトをしています。

学童クラブとは、放課後の時間帯に家庭で子どもを見守る家族がいない世帯の小学一年生から三年生の児童を対象とした、一時預かり事業です。

通常であれば児童の放課後、14時頃から18時の4時間程度を見守る仕事ですが(土曜日は一日預かり)、夏休み期間になると、約一か月間、まる一日児童を預かることになります。普段の倍の人手がいります。図書館に臨時職員募集のチラシが掲示されます。求職中の為、家でエアコンをつけることさえ忍びなく、図書館に入り浸っている僕の目に留まります。保育士を志していますがまだ資格が無い僕にとってはぴったりの仕事やーんと思い応募しました。

 

田舎育ちで祖父や祖母が常に家にいた僕にとって、学童クラブは未知の存在。働き始めてからは驚きの連続でした。

 僕の勤務しているクラブはとある小学校の教室の一つを間借して事業を行っています。

児童数は日によって変動はありますが25人から30人ほど。

一日のスケジュールを大雑把に記すと以下のようになります。

 

登校

読書(漫画もOK)

自習(夏休みの宿題をやる)

遊び

昼食(持参した弁当を食べる)

読書(食休み)

午睡(一時間程度)

遊び

おやつ

遊び

読書(漫画もOK)

下校

 

このスケジュールを見て言えることは、とにかく遊びが多いということ。

勉強をしているのは午前中のわずか一時間のみで、その勉強も、わからない問題が出てきたら飛ばして、帰ってからお家の人に聞いてくださいスタイルです。じゃあ僕たち臨時職員はその間何をしているかというと、「静かに」と言いながらクルクル児童の周り回っているだけ。勤務初日、一人の児童に「先生ここわかりません」と聞かれ、無職の図書館徘徊オジサンから一気に先生に進化したやーんと嬉しくなって、解き方を教えたら、古株の先生に怒られてしまいました。後に家族が宿題をチェックした際に正解になっていたら子どもが理解したと解釈されてしまうから、教えてはいけないそうです。なんでやねーん。学びたいと思ったときに正解が出るまで考えるのが一番大切やん!と思いましたが…。まぁ教員と指導員は違う仕事なので仕方ありません。

 

学童クラブの一番の特徴は違う学年の児童が一緒に過ごすところです。一年生が行儀が悪くて三年生が注意するような構図を想像していましたが、全く違っていて、行儀が悪いのは大抵三年生でした。

自分が小学三年生になったつもりで想像してみてください。低学年だからといっても、彼らは頭も心も体も十分発達しています。それなのに貴重な夏休みの毎日を、狭い教室に閉じ込められるのです。全身を目一杯使って遊びたいのに、熱中症予防で、プールにもグランドにも体育館にも行かせてもらえない。教室の中には既に読み終えた、ドラえもんドラゴンボールかいけつゾロリ等の本と、こちらも遊び飽きたトランプや、レゴや、野球盤等のゲームしかない。(ここに近い将来iPad等のタブレット端末が置かれたら日本は良くも悪くも新たなフェーズに向かうと思います)そしてちっとも疲れていないのに午後になったら一時間昼寝しろと言われる。まさに大人の都合という鞭の拷問です。僕なら発狂してます。というか既にみんな発狂して教室内を飛び回っています。そんななかでも一日をなんとか楽しく過ごそうと工夫を凝らす彼らを僕は尊敬します。

※気温が低いときは、もちろんグランドや体育館に出て遊びます。あいつらマジ楽しそうに遊びます。

※市町村も、おそらく少ない予算をなんとかやりくりして新しい本やゲーム盤等を購入し設置し続けています。新しいゲームが来たときのあいつらの笑顔マジ半端ない。

※※なんだかんだで全部ひっくるめても、ドラゴンボールの人気はやっぱり半端ない。まさか令和になっても子どもが気円斬撃ち合ってるとは。鳥山先生あんた凄いよ。

 

臨時職員の先生は大抵年配の方が多いから、夏休み期間中で大学生の若いお兄さん、お姉さん先生が来たりすると児童たちのテンションはガチアゲになります。なかでも児童福祉分野を志すのはやっぱり女性が多い為、若い男の先生が来ると、レアポケモンゲットだぜ的な感じで凄まじい人気です。

僕は三十代半ばで全然若くないですが、定年退職後に働かれている臨時職員さんよりは大学生の先生側にカテゴライズされるみたいで、僕なんかにも、ちょっと髭が濃いなと怪訝な顔をしながらも児童たちは寄ってきてくれます。

とくに寄ってくるのは小学一年生の女子児童たちです。僕からはちみつでも出てるんじゃないかっていうくらいどんどん寄ってきます。

昼食時、ある女子児童が「お父さんには土日しか会えない。いつも朝早くて夜とっても遅いんだよ」と嘆いていました。

みんな普段甘えられないお父さんの姿を僕に重ねて寄ってきてくれているんだと思います。日本のお父さんたち、マジお疲れさまです。

そしてその子のお弁当がなんとまあカラフルで可愛くて美味しそうなことか。

僕も弁当を作って持参しているんですが(冷凍食品のおかずをぶち込んでいるだけ)、別の女の子から「先生のお弁当なんか変」って真顔で言われてしまい、その子のお弁当の中身を覗くとまぁなんということでしょうピカチュウオムライスー。「うちなんかコレ入ってる」、「私のこれ見てよ」、あぁ小学生から既にマウント合戦が始まっている日本のお母さんたちマジリスペクトだよ本当に。

※平然とコンビニのサンドイッチを嬉しそうに食べている児童もいます。お母さんたちあまり無理しないでくださいね。

 

学童クラブで働き始めて一番良かったのは、子どもの寝顔が見られたことです。

僕は子どもがいないので、遊び疲れた子ともがだんだん寝静まっていく姿を初めて間近で見ました。この世界で最も素敵なものだと思いました。

安心して眠っている子どもの表情って本当に愛おしくて、絶対に守らなきゃいけないものだと思いました。

 

ビジネスパーソンのみなさん、会議や研修を一つとりやめて、ぜひ一日学童クラブで働いてみてください。仕事や生き方に対する考え方が変わると思いますよ。