『王国』 中村文則
今年は本をたくさん読もうと思って、読書マラソンという表を勝手に作って書斎の壁に貼り付けて、読んだ本を書き並べております。
今日は中村文則さんの『王国』を読み終わりました。
※この先ネタバレ注意
中村さんの作品はこれで5冊目くらいかな。
初めて読んだ『遮光』で度肝を抜かれて、それから世の中のことが嫌になったり、ちょっと暴力的な気持ちになったときに未読のやつを読んでます(ということは中村さんの本に出会ってから、もう5回くらい世の中のことが嫌になっているのか笑)
中村さんの作品の主人公の特徴は、一言でいうと、マジで空気読めない奴。
友達と遊んでて、他のグループにわざと聞こえるように暴言を吐いたり、みんながここらへんまでが笑って許せる範囲っていうラインをわざと越えて、問題を起こしてみたりする。田舎だったら一学年に一人くらいの割合でいる異常な奴です。
こういう奴って頭がいいと手におえなくて、周りの人間の自己犠牲を受けて社会に出てからかなり大成するんだよな。
こういう奴が楽しそうにしているのを見ると、周りの人間はかなり不安になる。
でも中村さんの作品を読むと、そういう奴が何を考えているのか少し分かって楽になれる気がする。
『王国』は女性が主人公だったので、これまでの中村作品とは異質だった。
主人公は、性以外では自分をコントロールすることが出来ていて、そのおかげで性に対する欲や善悪の感情が際立っていたように思う。
本の中で、主人公がお金のため自分の能力以上の世界にいつの間にか潜り込んでしまったと自覚するシーンがあった。
終盤、悪の親玉木崎と対峙する場面では、ピストルを撃つか撃たないかという簡単な選択の狭間で、命や人生に対する深い考察があった。
木崎はこう言っていた。
「問題は長短ではない。肝心なのは、この世界の様々な要素をどう味わうかだ」
この世界への切符が命であるなら、お金、能力、時間、何が世界を楽しみつくすのに最も大切なのだろうか?
次は村上龍さんの『インザミソスープ』を読みます。