人生30過ぎてからでしょう。

好きな本、映画、日々考えていること、気の向くままに書きます。

嘘みたいな一日

 

いつか人生のどこかで

エレベーターに閉じ込められたり

雪山で遭難したり

いけないことをして独房に入れられたり

そんなじっと一人で寂しさを耐えなきゃいけないときのために

思い出すたびにムフフとなる

嘘みたいな一日というのが僕にはあって

 

それは僕がNYの語学学校に通っていたときの話で

学生30人くらいでヤンキースの試合を観に行った一日で

一人ひっくり返るくらいキレイな日本人の女の子がいて

アメリカ人もブラジル人もフランス人も韓国人も

みんな彼女のとなりに座るのをねらっていて

スタジアムに着くなり椅子取りゲームのオリンピックになって

僕は僕でヤンキーススタジアムの二階席の傾斜があまりにも急で

脚を震わせながら「あわあわどこか空いてる席はないかしら」って必死になって探していたら

イギリス人もスペイン人もイタリア人も差し置いて

「さるたこ一!ここ!一緒に座ろー」ってその女の子に声かけられて

アメリカ人もブラジル人もフランス人も僕のことを殺すような目で見てきて

とにかく二人で座ったら

韓国人や中国人やロシア人やらそりゃもう取り囲まれて

緊張してホットドッグのケチャップとかボトボトこぼしてたら

「松井だ!ほら!松井だよ!」って彼女が僕の肩をたたいて

「え?なになに?なによ?」って股にホットドッグはさみながら

ナプキンでジーパンに付いたケチャップを拭いてたら

「ガズィラ――――――――!マツイ―――――――――!」ってアナウンスが流れて

会場がワーってなって

そしたらカキーンって大きな音がして

誰かが「シーヤー」って叫んで

ホットドッグのことなんか忘れて立ち上がったら

いきなり彼女が抱きついてきて

人生で初めて「ワーオ」って言っちゃって

恥ずかしくなってスタジアムの方を見たら

松井がたんたんとダイヤモンドを周っていました

 

おそらくこんな一日はもう僕には訪れないだろうし

今となってはあの日の出来事が本当に起こったかどうか確かめるすべもないけれど

目を閉じてあの日の断片をどこまでも細かく思い出していれば

どんな孤独な時間も幸福な気持ちでやり過ごすことができる

みなさんにもそんな一日があればいいなと思います