男と女の違いについて
男と女の違いについて考えることは、僕にとってお金を稼ぐことより重要なことであり、たぶん死ぬまでその答えは出ないし、出なくていいような気もする。
僕が知りたいのは、身体や生物学的な違いではなく、社会学的な違いでもないところにある男と女の違いだ。
最近、山田詠美さんの小説を立て続けに読んだ。
時々、無性に女の作家の小説を読みたくなる。
頭で書いていない感じがするからだ。
山田さんの小説は本当に胸をざわつかせる。とても静かに、そして相当おちゃめなやり方で。
女の子がみんな、山田さんの描く女の子みたいに恋をするなら、僕も女の子だったらよかったのになぁとか思ってしまう。
男だって恋をするけど、たぶん女の子の方がそれを数倍楽しんでいるんだろうなって妬む。
山田さんだけでなく、吉本ばななさんとか江國香織さんの小説を読むとそれがはっきりとわかる。恋が楽しくて、そして悲しくて仕方がないからあんな小説が書けるのだ。
たぶん、僕が美しい女性を見たときに触れたくなったり、匂いを嗅ぎたくなったりする気持ちとか、恋をしている女性が見せる信じられないくらい多彩な表情を一つも見逃さないように見つめたくなる気持ちとかそんな気持ちを、何倍にもして抱えて、女の子は好きな男の子のそばにいるんだろうなとか想像すると、また女の子だったらよかったのになとか羨んでしまう。
でもおそらく、男にしか味わえない感情もあるんだろうなと思う。
例えば、殴り合いをしている時とか、殴り合いを見ている時とか、たぶん、女の子には想像できないくらい、男は動物的で、暴力的で、真剣に相手のことを消してやろうと思っている。これはたぶんすごい感情だと思う。
他にも、男は本気で世界をひっくり返せるとか思う日もあるし、本気で死にたいとおもう日も多々ある。
こういった心の働きの違いはどっから湧き出てくるんだろう。
後天的な環境が左右するなら、僕なんかはとっくに女の子だ。だって普通の女の子より恋でたくさん泣いてきた自信があるもの。
たぶんどこか別のところに秘密があるんだろう。
身体の中にあるのか。
そういえばセックスをしている時は圧倒的に自分が男だと感じる。
頭の中にあるのか。
言葉を使うときも、否応なしに自分が男だと感じる。
いちばん曖昧なところはどこだろう。
僕は何とかして、心の奥底に降り立って、男と女の違いの秘密みたいなものに迫りたいなと思う。
だってそれだけが唯一、現実の命でやる価値がある気がするから。
それ以外の経験なんて全部、数多ある小説に任せればいいんだから。